2017年10月25日

「アウトレイジ ビヨンド」のこと

 アウトレイジシリーズの最新版ができたらしいので、私は前作のおさらい。批評でも感想でもないけれど、ひとつふたつ疑問を。

 たけしはなぜやくざ映画なんか撮るんだろう?~「あの夏、いちばん静かな海。」なんて素敵な映画をとっていたたけしはどこに行ってしまったんだろう?

 この映画にはなぜ私たちの身の回りにいくらでもいて男よりずっと存在感をもっている女性が出てこないんだろう?出所後のたけしをかくまってくれる韓国人の邸宅で饗応係としてつけられる女と殺されるやくざの隠れ家の女だけじゃなかったかな。やくざも奥さんも子供もいるんじゃないんだろうか。

 この映画にはなぜ生活に匂いが少しもしないんだろう?なぜ普通の生活がまったく描かれないんだろう?カメラを回すだけで否応なく映ってしまいそうな生活の光景をなぜみんな消してしまわなければいけないんだろう?


 この映画、エンターテインメントとしては、よくできていますよね。色んな意味でプロのワザ。日本の男優がやって一番似合うのはやくざだ、とか、日本の男優が似合うのはやくざだけだ、というようなことを聴いたことがあるけれど、まさにこういう作品を見ているとそう思いますね。日本の男優たちはどんなチンピラでもやくざ映画のやーさんの真似だけはうまい、というか地でいける(笑)

 ただの暴力団どうしの欲得ずくの争いや裏切りのドラマを描いただけ、というのは少し酷かもしれず、そんな世界に倦みながら、なりゆきで巻き込まれていく中で、無器用に現代やくざらしくなく「筋を通す」ってのがたけし自ら演じる主人公ですが、高倉健とちがって、別に様式的に美化されたやくざではなくて、誰とつきあってもうまくいきそうもない、不愛想で無器用なおっさんが、根性だけはすわっていて、欲得ずくだけでやくざしているくせに実際には気の小さな、組織に依拠してしか生きられない現代のやくざの世界で運にも恵まれて、そんな自分を曲げずに淡々と生きている姿を描いています。

 でもそれはこの世界で普通に生きる人たちの中で、そういう無器用な「筋のとおった」生き方をする人を映すような姿になっているようには思えないけれど・・・

 

 

 

 
 

saysei at 21:00│Comments(0)

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