2016年12月25日
原田マハ『楽園のカンヴァス』
強くお勧めする一冊。
新しい本も続々と出している作家ですが、いままで読んだことがなくて、こんどようやく「楽園のカンヴァス」を読みました。涙腺が弱くなっているせいか最後には泣いてしまいました。とても感動的な小説です。
著者の美術についての造詣は半端でなく、年季の入ったもので、ちょっと頑張って俄か勉強して設定に借りてみました、というようなのとはまったく違うようです。文庫本の解説をしている高階秀爾さんが美術ミステリーみたいなことを書いているけれど、ミステリー作家が美術界を描いてみました、というような作品ではない。美術への強い想いが根底にあるのが常に、そして最後に圧倒的な感動とともに、読者に理解されるような作品です。
この感動は、謎が解けたカタルシスでもなければ、作中の主役二人の出会いと別れと再会のドラマとその結末への寿ぎでもなくて、そのどちらもあるけれども、人間くさい欠点もたくさんもったこの主役たちの、それだけはホンモノの、美術への愛情が最後の最後まで一番大きな深い伏流水のように流れていて、それが最後に一気に地上に溢れ出るのを見るような感動です。
作品としても非常に手の込んだ構成と用意周到で巧みな語り口で、或る意味で普通の読者から見れば大きな起伏を持ちにくい地味な素材が、非常に劇的な物語になっていて、一度手にすると置けなくなりました。
ルソーは私にとっては不気味なところのある不思議な絵を描く、あまりにも著名な美術史上の画家のひとりにすぎず、作家についても作品についても調べてみたことはなかったけれど、 この作品でずいぶん啓蒙され、機会があればぜひまたじっくり見てみたい、と思いました。
新しい本も続々と出している作家ですが、いままで読んだことがなくて、こんどようやく「楽園のカンヴァス」を読みました。涙腺が弱くなっているせいか最後には泣いてしまいました。とても感動的な小説です。
著者の美術についての造詣は半端でなく、年季の入ったもので、ちょっと頑張って俄か勉強して設定に借りてみました、というようなのとはまったく違うようです。文庫本の解説をしている高階秀爾さんが美術ミステリーみたいなことを書いているけれど、ミステリー作家が美術界を描いてみました、というような作品ではない。美術への強い想いが根底にあるのが常に、そして最後に圧倒的な感動とともに、読者に理解されるような作品です。
この感動は、謎が解けたカタルシスでもなければ、作中の主役二人の出会いと別れと再会のドラマとその結末への寿ぎでもなくて、そのどちらもあるけれども、人間くさい欠点もたくさんもったこの主役たちの、それだけはホンモノの、美術への愛情が最後の最後まで一番大きな深い伏流水のように流れていて、それが最後に一気に地上に溢れ出るのを見るような感動です。
作品としても非常に手の込んだ構成と用意周到で巧みな語り口で、或る意味で普通の読者から見れば大きな起伏を持ちにくい地味な素材が、非常に劇的な物語になっていて、一度手にすると置けなくなりました。
ルソーは私にとっては不気味なところのある不思議な絵を描く、あまりにも著名な美術史上の画家のひとりにすぎず、作家についても作品についても調べてみたことはなかったけれど、 この作品でずいぶん啓蒙され、機会があればぜひまたじっくり見てみたい、と思いました。
saysei at 18:58│Comments(0)│TrackBack(0)│