2024年10月

2024年10月31日

ドジャース優勝おめでとう!

 ワールドシリーズでドジャースが優勝したというニュースをラジオで聞いて、テレビをつけたら、試合が終わったあと、ドジャースの選手たちが狭い台の上に満員電車内みたいにぎゅうぎゅう詰め状態で集まって、優勝カップを授与されている最中でした。そのあとシャンパンファイトと呼ばれているらしい狂宴で喜びを爆発させていました。地区優勝、地区シリーズ突破、リーグ優勝、ワールドシリーズ優勝と短期間の濃密な長旅を勝ち進んで今季4度目のシャンパンファイトということになるそうです。

   このポストシーズンでは大谷は同僚フリーマンのような大活躍とはいかなかったけれど、怪我を押して出場し、憧れだったワールドシリーズ制覇に参加、貢献したことは、若い頃からの夢を着実に現実にしてきた大谷選手がまたひとつ大きな夢を現実のものとしてその手につかんだわけで、有言実行を地でいくような快挙でした。レギュラーシーズンの成績をみると、ほとんどの評価項目で首位か二位で、ダントツであることがわかります。チーム内でもMVPトリオのあとの二人、ベッツ、フリーマンと比較しても、打点でほとんど2倍の成績を残していて、チームへの貢献度が格段に大きいことが見て取れます。

 10年1000億円の契約金にみんな驚いたけれど、1年たったいま顧みれば、ドジャースはなんとお得な安い買い物をしたことかと思います。関西大学の宮本勝浩名誉教授によれば、この1年間の大谷選手の存在がもたらした経済効果は1,168億円強にのぼるそうです。

 米国の様子をうかがっていると、どうも野球というプロスポーツ自体がだいぶ斜陽になって、アメリカ人が熱狂するのはバスケットボールやアメリカンフットボールらしい、と素人にも分かるような兆候が見られていたと思うのですが、大谷選手の活躍で、エンゼルスやドジャースの本拠地だけでなく、彼が試合で赴く他球場の来場者数迄、何割か増えたそうだし、おそらく彼に関連する各種のグッズの売れ行きや、テレビなどの視聴率もみな相当アップしているでしょう。大谷という一選手が米国の野球自体を再活性化したことはほぼ間違いないと思います。

 わたしのように野球にもともとほとんど関心がなく、中継などみたこともない者は、大谷が日本でやっていたときは、所属チームの事も、彼がどんな選手であるかも知らなかったほどですが、米国で注目を集めてようやく、そんなすごい選手がいたのか、と気づき、だんだんと毎朝、きょうは彼はホームランを打ったかどうか気にし始め、フォローしていくようになり、その認知のピークになったのはもちろんこの前のWBCの全過程と劇的な優勝でした。おそらく野球に関心のなかった日本の老若男女の多くが、私と同様にいまや毎日のように大谷の活躍を期待し、その活躍から元気をもらって日々を送っているんじゃないかと思います。そういうことは単なる「経済効果」の数値では測ることができない、いっそう大きな大谷選手の波及効果といっていいでしょう。

 故障からの完全復帰をなしとげて来季はまた二刀流で活躍するのでしょうが、怪我無く活躍してくれることを祈りたいと思います。ドジャースの監督はなかなかの名将、智将のようですから、むちゃな使い方をすることはないでしょうが、野球が好きで好きでたまらない野球少年がそのまま大きくなったような大谷選手ですから、監督がやめといたほうがいいんじゃないの、と言っても、いや出たいんだ、と押し切って出てくる、そっちのほうが心配ですね(笑) 左肩を亜脱臼したときも、なにもこんなときリスクを冒して盗塁なんかすることないのに、と思ったファンは少なくなかったと思いますが、そういうことをやらずにおれないし、やっちゃうのが、やりたくてやりたくてたまらない野球少年そのままの愛すべき大谷選手なのでしょう。


きょうの夕餉

★ポタージュ
 ジャガイモ、タマネギ、シイタケのポタージュ。シイタケの香りが高く、とても美味しかった。長男がパートナーにプレゼントしたハンドミキサーのおかげで、野菜が何でも粉砕容易で、手軽にこういう美味しいものができるんだそうです。

★ハンバーグ
 ハンバーグ。鶏、豚、牛の三種の肉を入れたハンバーグ。ボリュームたっぷりでしたが、意外とあっさりして食べやすかった。ニンジンはこのあいだ上賀茂でゲットしてきた抜き菜の、最後。

★サラダ
 レタス、タマネギ、リンゴ、クルミのサラダ。リンゴとクルミは相性が良いようです。

★ガーリックバタートースト
 ガーリックバタートースト。

IMG_5347
 チーズ。ちびちびと切って食べているときりなく食べられます。チーズ大好き。

(以上でした)

 今日は井上辰雄さんの『嵯峨天皇と文人官僚』の冬嗣のところを読んだりしていました。彼の人に好かれる温厚で柔軟な性格は、パパ内麻呂譲りだったようですね。『日本後紀』巻二十二の弘仁三年十月六日の条に、右大臣従二位藤原朝臣内麻呂が死去した、という記事があり、内麻呂についてこう書かれています。
 「内麻呂は贈太政大臣正一位房前の孫で、大納言正二位真楯の子である。代々大臣を出している家柄で、若いときから人望があり、穏やかな性格で人はみな喜んで従った。大同のはじめに大納言となり、近衛大将を兼任し、同年中に右大臣に転じた。近衛大将の任はそのままで、大臣・大将を兼ね、桓武・平城・嵯峨の三天皇に仕えて、いずれも信頼・重用された。天皇の下問を受けて諂うことがなく、他方、天皇が嫌がる場合は敢えて諫めることをしなかった。政務の中枢に参画して十余年過ごしたが、過ちを犯さなかった。」(森田悌訳『日本後紀(中)』講談社学術文庫p293-294)

 冬嗣については『公卿補任』の弘仁二年、從四位上藤冬嗣の記事の末尾にこんな風に書かれています。
 「冬嗣朝臣。器局温裕。職量弘雅。才兼文武。満叶變諧。寛客接物。能得衆人歡心云々。」
 (冬嗣朝臣は器量が温かくかつひろく、見識ゆたかで、文武の才を兼ねそなえ、対応が柔軟で物事には寛容に接し、よく人々の歓心を得ることができた。)

 藤原氏というとどうも権力欲でぎらぎらしていて、ライバルを蹴落とし、子女を宮廷に送り込んで天皇家との婚籍関係を梃子にのしあがって権力を手にしていく一族、みたいなイメージが頭に植え付けらrていて、一人一人の性格や資質、能力、実績を公平無私に見ることがなかなかできなかったのですが、道長の事を調べているうちに、どうもこれはあの望月の欠けたることもなき云々からイメージされるような人物じゃなさそうだな、もう少し繊細で色々気配りのきく優秀な人だったようだな、と思えてきて、それにつれて彼の御先祖様についても、ひとりひとりよく見極めたほうがよさそうだな、と思うようになりました。

 不比等や良房あたりは、かなりエグイこともやったようだけれど、いろいろ悪くいわれている兼家にしても、『蜻蛉日記』など読むと、「道綱の母」の偏った目を少し違った角度にずらして見れば、男性としては相当魅力的な人物だったように思えるのですが、どうでしょうか。

 まあ焦ることもないので、いろんな方面から少しずつ彼らの人間としてのありように少しでも近づくことができれば、古代史が一層身近に感じられるかもしれないな、と期待しています。

 きょうは私が「ガン・スモーク』を見ている間に、パートナーはせっせとまた芙蓉の枝をさらに短く切って、正真正銘ツンツルテンにしていました。ゴミ袋に入れるために、少しずつやっていたようです。これで芙蓉も一区切り。つぎは専用庭の生垣になっているプリペットが伸びているので、これを刈るようですから、こんどは私も一緒にしようと思っています。

 それにしても朽ち果てて、いまにも踏み外して全壊しそうな木造テラス、1年前に発注したはずの次男の友人の業者が、まったく音沙汰なしなので、そろそろ見切りをつけるほかなさそうだな、と思っているところです。
 しかしこういう仕事は初めての業者だと信用できないし、ほんとうは家族の知り合いとか、前にやってもらって信用できるところの方が良いのですが、ここまでほったらかしにされたのでは、やる気あんのか、と疑わざるをえません。一度は督促してみようとは思っていますが・・・
 いまどきの若い世は一般にきちんとしたことが苦手で、だらしないところがあるのかもしれませんが、とりわけ次男がこういうことにまことに呑気というか時間の観念がどこかへいってしまうようで、おそらくその友達も似たような性格なのかもしれません。

 しかし、プロフェッショナルな仕事では、こんな呑気にルーズなことをしていたらものの役に立たないと思うのですが、自分が好きなことになると全然人間が違ったようになるのかもしれませんね。



saysei at 22:01|PermalinkComments(0)

2024年10月30日

久しぶりのスナップショット

 別のブログを立てている、私が出会った文化人の一瞬の横顔を写真のスナップショットの代わりに文章でとらえようという「スナップショット」を長くさぼっていましたが、きょう久しぶりに書きました。だんだん長く付き合ってきた人まで書くようになって、かえって書きづらくなっていましたが、エイヤッと短時間で書いちゃいました(笑) ➡「川添登さん」

ひとり書くとまた、つるつると思い出してきて、二人、三人と書けるかもしれません。

 きょうは家の中のお掃除をして、あとは「ガン・スモーク」を見ていました(笑)


きょうのお昼(天ぷらそば)

おひるのそば

きょうの夕餉

★シイタケのガーリックバター焼き
 シイタケのガーリックバター焼き

★トウガンと手羽元のスープ
 トウガンと手羽元のスープ

★鯵の塩焼き
 鯵の塩焼き

★空心菜のぽんずおひたし
 空心菜のポン酢かけ

★冷奴とキュウリのクルミ味噌のせ
 冷奴とキュウリのクルミ味噌のせ

(以上でした)

saysei at 22:10|PermalinkComments(0)

2024年10月29日

ガン・スモーク

 わたしが中学か高校のころ、テレビで西部劇のシリーズものをたくさん放映していました。その中で私が一番好きだったのはスティーブ・マッキーンの「拳銃無宿」でしたが、それに次いで好きだったが、時期は少し違ったかもしれませんが、「ガン・スモーク」でした。
  
 あれから半世紀以上たって、もう一度見たいな、と思って、「拳銃無宿」のほうはVHSで6巻だったかのセットになったのを随分前に手に入れて、全部再見し、その後はずっと本棚の奥に押し込んでありましたが、最近になってもう手放してもいいな、と思って、カビが生えたりしていないか、一通り全部チェックしておこうと思って、「処分前一見」というので、順次暇なときに見ていました。

 けれども「ガン・スモーク」の方はなかなか入手できず、ウェブサイトで探すと、何枚かのDVDに治まったセットが中古品で出てはいるのですが、ちょっと手の出せる値段ではないものばかりで、諦めていました。ところが数日前に偶然また検索してみたら、比較的安く売っている商品の半値か3分の2くらいの値段で出してくれている人があって、もう二度とこんなチャンスはなかろうと思ってすぐに発注して、きょう無事に入手できました。個人で販売する場合は、私もこういう値段をつけて、早く処分しようとすることが多いので、そういうときは購入者にはチャンスです。

 安く購入したら、今度は処分しようとするときも、購入価格より少し安い程度で出せるので、差し引きすればほとんど出費せずに楽しむことができます。商売でやっているのではないので、個人としてはこうして本当にただ楽しみたい人の手から手へ少しでも廉価に渡っていくのがいいと思います。

 早速4枚のうちの1枚を食後に見ているところですが、あの一対一の早撃ちの決闘場面から始まって、「ガン・スモーク!」という低い男性の声でタイトルが響く懐かしいスタートに、中学・高校生だったころのように、ちょっと心ときめく思いです。


★おでん
 きょう火曜日は、月曜日に長男が一緒の夕餉でいつも以上に張り切って料理の知恵と腕を振るった翌日の実質「休息日」(笑)で、月曜日は量も多いので、そののこりがあれこれあって、全然新しくつくるまでもなく夕食が間に合うので、きょうもそのならいで、おでん。よく味が具に沁みて、より美味しくなっていました。

★焼き豚
 焼き豚

★キス
 キス

★のこりもの
 野菜の天ぷら

★大根葉と皮のジャコ山椒入りキンピラ
 大根葉と大根の皮のジャコ山椒入りキンピラ おでんに入れた大根の皮を使っていますが、とても美味しい

★ほうれん草
 これは「サラダ用」と書かれて売られていた赤芯ほうれん草のカツオかけポン酢和えなのですが、昨日一口食べて、長男も私も、美味しい!と口にしたほど、美味しかった。ほうれん草のおひたしに美味しい、と声を挙げたことはそれまでなかったと思いますが(笑)、ほんとにすぐに美味しい味だと感じられるほどでした。サラダ用ではありますが、こうしてポン酢和えして食べたほうがたぶん美味しいほうれん草です。

(以上でした)

 きょうは良房・基経の本格登場直前まで読んだ瀧浪さんの『藤原良房・基経』の藤原北家前史にあたる部分に刺激されて、冬嗣について多少調べ、昨日借りて来た図書で冬嗣の漢詩など読んでいました。嵯峨天皇側近の優れた官吏であると同時に、嵯峨天皇につきあえるだけの漢詩の詠み手でもあり、和歌もつくり、いまの香道の元祖でもあるらしく、さらに勧学院や施薬院を創設するなどすぐれた政治家だったようだし、「公卿補任」の記事によれば性格も温厚で対応が柔軟、物事に寛容で、文武の才に秀でた人だったようで、嵯峨天皇というそれ以上にまた優秀な天皇を支える最側近にふさわしい人物だったようです。道長からだいぶ先祖返りしましたが(笑)、不比等や冬嗣や良房のことはいずれ少しは詳しく知りたいと思っていたので、いい機会だと思って、少し嵯峨天皇の時代のことを書いた『日本後記』も現代語訳があるので、きょうはそれも読んでいました。おかげできょう久しぶりに書こうと思っていたスナップショットのほうは延期となりました。






saysei at 22:19|PermalinkComments(0)

2024年10月28日

きょうの夕餉

★なまピーナツ
 珍しく殻付きの大きな生ピーナツがとても安い値段で出ていたので買ってきたそうです。国産ピーナツというと、ごく少量でも700円、800円しますから、こんな大きな生ピーナツが山盛りで300円台だったとか。それを茹でたもの。大好物♪

★キス
 大好きなキスの丸干し

★野菜の天ぷら
 野菜の天ぷら。レンコン、シイタケ、ゆり根、ニンジンのかき揚げ等々

★太刀魚のおつくり
 太刀魚のおつくり  先日は焼いたのをいただきましたが、きょうのお刺身もすごく美味しかった

★焼き豚
 焼き豚

★聖護院大根とサトイモに漬け
 聖護院大根とサトイモの煮もの 野菜は上賀茂でゲットしてきたもの

★赤芯ほうれん草のおひたし
 赤芯ほうれん草のおひたし ほうれん草が新鮮だからか、細身でシャキシャキした触感で柔らか、とっても美味しかった これも上賀茂野菜

★鶏の磯揚げ
 鶏肉の礒あげ

(以上でした。きょうは長男が一緒の夕餉でした♪)








saysei at 21:15|PermalinkComments(0)

与党の大敗?

 昨日の選挙の結果を最後までは見ないで寝てしまいましたが、今朝新聞をみると、自民+公明の連立与党が「大敗」し、目標の過半数233を下回る215に終わったということでした。自民党は選挙直前に、非公認候補に2000万円配って、選挙費用ではない、と弁解していたけれど、じゃなぜ選挙直前にそんな大金を非公認候補に配るのか、国民が納得できるはずもない大嘘をついて、みずから墓穴を掘りました。普通なら首謀者の森山幹事長は当然辞任すべき一件ですが、居直っているらしい。つくづく懲りない連中だな、と思います。

 当然の結果とはいえ、与党の「大敗」で本当に良かった。これで与党が過半数をとったりしたら、もう裏金作り議員だろうが汚職議員だろうが、みんな「みそぎが済んだも~ん!」とはしゃいで国会へ戻ってくるに違いなかったので、政治資金支給報告諸不記載議員を全部落とせなかったのは残念だけれど、せめて46人中28人ですか、6割落とせたのは、国民の行動として、一応合格の最低ラインはクリアしたなぁ、という感じです。これで彼らをパスしていたら、政治家だけじゃなく、選挙民もアホなんだから仕方がないよ、と諦めるほかなかったでしょう。政治家がますます国民を舐めてかかるようなそんな状況だけは辛うじて避けることができたのは、なにはともあれめでたい。

 自民・公明の票を奪ったのが主に立憲民主党だったのは、それしか自民にすげかえることのできる政権党がないから当然でしょう。国民民主党が4倍に増えたそうですが、この政党はいつでも自民党に吸収合併されてしまっても何の不都合もない典型的な第二自民党ですから、風向きによっては実際にそうなるでしょうし、それなら与党は過半数をゆうに確保できたことになります。そうでなくても、自民党は一時的に非公認にしたものの、「無所属」で出て当選した議員は必ずや復党させるでしょうし、保守党のような単に自民党の右派が別の名で出ているだけみたいな泡沫党派の議員も加わるでしょうから、野田さんのいうような、野党が政権を奪うという事態には当面ならないでしょう。

 自民党の連中があまりに国民をなめているから、今回だけちょいとお灸をすえておこう、という程度の有権者はけっこう多いでしょうし、来年の参議院選挙ですぐにそうなるかどうかは分かりませんが、おそくとも次の衆議院議員選挙では必ずこの反動で自民党が大勝するのではないでしょうか。これまでの選挙の歴史をみても、庶民のバランス感覚ってどうやらそういうものらしいし、立憲民主党をはじめ、どの野党をとってみても、安定的な政権を維持できるだけの力量、能力も政策も人材も整っていないのは国民の目には明かでしょうから。野党どうしの連立政権など、もっとあぶなっかしくて、みていられないと国民は思うでしょう。
 立憲民主党が腹をくくって、この4年間の間にうんと勉強して、国民が感心してこれなら安心してついていけそうだと思うようなまともな政策をつくりあげ、優れた人材を育てて、いまの幹部らはさっさと退場して、大きく脱皮して、単独で政権をとりにいくのでなければ、政権は決してとれないでしょうし、仮にとったとしても、すぐにポシャルでしょう。そんなことは国民のほうが直観的によくよく知っています。鈍感なのはご当人たちだけで、また勝った勝ったとうかれていたら、すぐに地獄の窯が待っている(笑)。

 立憲の野田さんは比較的安定感があって、その発言や様々に言ってくる連中への対し方にしても、一定の器の大きさを感じさせ、泉や枝野よりもはるかに良かった。今回立憲に投票した人の多くは、選挙戦の中での彼の言葉や態度に信頼感を抱いたのではないか、という気がします。しかし彼の次が泉や枝野あるいはもう一人の女性候補に突然立っていた人のような人材しかいないとすれば、立憲民主党に未来はないのではないか。

 維新は伸び悩んで議席を減らしたようですが、数からいえば依然野党第二党ですから、キャスティングボードを握る政党かもしれません。維新の良かったところは関西的な庶民感覚を政治家の言葉に取り込んで、日常的な感覚に依拠した政治改革を唱えて、従来の利権でがんじがらめの行政権力と自民党などの政治権力との癒着構造に風穴をあけ、地方政治と地方官僚組織の風通しをよくしたことだったでしょう。しかし自分たちがトップの座をとったり多数の議員を送り込んだ自治体での振る舞いは市民にとっては一長一短で、ある程度の攪拌作用の効果をみせたものの、そこから新たな展開がみられず、結局は改革を口で唱えるだけの第二自民党的勢力になりおわる可能性が大きくなってきたことを、国民は敏感に感じ取っているのでしょう。

 大阪の風土に合った政治的パフォーマンスが受けていたけれど、そこから全国的なレベルでの本格的な政党組織として当然構築しなければならなかった政治理念や、社会政策にとどまらず、外交や防衛にまでわたる明確な政策を既存政党に対してぶつけ、みずから論戦しながら鍛え上げて高くランドマークのように掲げるというようなことは何もできずじまいでした。
 一番ひどかったのは、橋下がまだやっていたときでしたか、石原慎太郎などを偉大な先生扱いしてひれ伏していたのを見たときには、あ、維新はこれで政党の体を為さない、どうしようもない烏合の衆だと自ら証明してしまったな、と感じたものでした。みずからの理念を欠いた政党などというのは、言葉自体が矛盾であって、「石原先生」のような自民党のお偉方の指示に従って、無難な社会政策的な事をやっている以上のことはできないでしょう。

 今回共産党は、自民党の裏金疑惑を最初に暴いて世に訴えた政党なんだ、としきりに主張していましたが、結果は2議席減らしたとかで、退潮の長期的趨勢は変わらなかったようです。
 誰が自民党の上げ足を取ったか、などということを自慢する暇があったら、党の長期的な退潮、つまり国民に見放されてきている、という、ずっと重要で深刻な政党としての危機について真っ先に語り、自省し、党の理念から政策にいたるまで根幹を疑って時間をかけて出直す姿勢を見せるのでなければ、この党は衰亡消滅の一途をたどるに違いありません。もともとスターリン主義政党として出発したその組織は、ロシアのスターリン主義は批判しても、みずからの政治理念や組織の核心に居座っているスターリン主義(ソフトスターリニズム)にはとんと気づかないので、21世紀の世界に生きることは少々難しいだろうと思います。

 しかし、こんなふうに岡目八目で既存政党のことを好き放題、あれもだめ、これもだめ、と言っていられるうちはまだよいので、一番こわいのはこういうグータラな、どうしようもない政治状況に、貧富の差がとんでもなく大きくなって国民の大多数が追い詰められたところへ、世界情勢の急変(いわゆる「台湾危機」や、ならずもの国家の暴挙などを契機とする)や破滅的な災害(地震で62.7万棟~134.6万棟が全壊、津波で11.7万人~22.4万人の死者、火災で4.7万棟~75万棟が焼失し、2.6千人~2.2万人の死者が出る、2,410万軒~2,710万軒が停電し、西日本全体の電力供給は半減、上水道は2,570万人~3,440万人が断水:中央防災会議の被害想定第二次報告による)が起きるといったことが重なるとき、想像を絶するようなモンスターが出現するのではないか、というとても現実的な恐れです。

 そんな状況になれば、日本社会は全体として確実にパニックに陥ってしまうでしょうし、その前後に必ずこの危機に見合う強力で超越的な権力が出現するような政治的力学なり大衆の社会心理学的なモチベーションが働くのではないかと思います。もちろんそれがファシズムというやつです。
 追い詰められた国民が熱狂的に歓迎し、積極的に支持コールを叫ぶような新たな時代のヒトラーが必ずや出現してくるでしょう。それはおそらく政治意識の力学とでもいおうか、政治がらみの社会心理学的必然とでもいおうか、ちっぽけな個人や政党が抗おうとしても、圧倒的な大衆の力で押し切られてしまうような、圧倒的な力として立ち現われて来るに違いありません。

 ライナー・フェスナー・ファスビンダー監督の映画「ベルリン・アレクサンダー広場」には、そのような「前夜」の状況が非常に具体的な様相として描かれています。またドイツのテレビのシリーズものドラマでヨーロッパで圧倒的支持を受けた「バビロン ベルリン」もそうした「前夜」のけだるい、退廃的なベルリンの様相、雰囲気を非常にシャープな映像で伝えてくれていました。日本の状況がどことなくあのような社会状況の雰囲気に似てきているな、と多くの人たちが感じるようになるのも、そう遠い日ではないような気がします。



saysei at 19:23|PermalinkComments(0)
記事検索
月別アーカイブ