2017年03月
2017年03月26日
村上春樹『騎士団長殺し』を読む
発売日に買ってすぐ読みだして、なるべくゆっくり愉しんで読もうと思っていましたが、結局途中でやめられず、だいぶ前に読んでしまって、なにかこのブログで感想でも書きたいと思って机の横に積んでおいたのですが、だんだん億劫になってきました(笑)。
別に書評家でもないので、書かなきゃならないわけでもないし、読んで楽しめたらそれで充分。今回もとても面白かったし、或る意味では分かりやすく思えました。加藤典洋さんによれば「村上春樹は難しい」(岩波新書)らしいから、深く読めばそうなのかもしれません。
深く読まずに(笑)さらっと読めば、これは最初からコキュの話だなってすぐわかってその線で読んでいけますね。寝取られ男。
イケメン男に最愛の妻を寝取られて、青天の霹靂のごとく大ショックで呆然自失。車を駆って北国まで出かけ、どの町や村へ行ったかも定かには覚えがないようなありさまで、ようやく落ち着いた先が友人の父親の屋敷で、この父親が主人公と同じ画家、それも著名な日本画家で、もともと洋画家だったのに戦中のヨーロッパへ行ってウィーンで反ナチ組織に関与して捕まって恋人を殺されたり自分も拷問を受けた後、過去を封印されて送還され、日本画に転向した曰く因縁をもった画家。いまは病院で死にかけているこの画家の家に友人の好意で逗留することになり、そこで絵を描きながら妻を失って負った傷を癒している。
そんな日々に画家が屋根裏に隠していた「騎士団長殺し」なる奇妙な絵を見つけ、また、裏山の社のそばにあった奇妙な穴の底から聞こえる鈴の音に導かれて、「ご近所」として知り合った、一人で広大な屋敷に住む免色という男の計らいで穴を掘り、鈴を取り出すと、ますます不思議なことが次々に起きます。やがてその絵の中の騎士団長の姿かたちを借りた「イデア」が姿をあらわすあたりから物語は非現実の世界を彷徨い始めます。それは作家の頭の中の一寸先も分からない手探りの彷徨の世界へ我々を巻き込んでいくようなところがあります。
まあこう要約的に書いたって、読まなきゃこんな荒唐無稽な話をしてもわけわかんないでしょうから、この辺でやめますが、へんな言葉づかいのこの騎士団長が登場して、なかなか話がぶっ飛んで面白くなってきます。「私」が絵を教えている教室の生徒でもある、免色とのイワク因縁のある少女が実に思春期の少女らしい、とても扱いにくく同時に魅力的なニンフェットとして描かれています。まだ小さな胸のことを二人の秘密のように「私」と話す少女を淡くコケティッシュでありながら蕾のような可憐さで描いていく、この作家はこういう人物を描くのはとてもうまいなと思います。
ついでに言えば、或る意味であからさまな会話が、実に気の利いた品の良い言葉のやりとりとして描かれていて、この少女に限らず情事の相手である人妻との会話にしても、会話の部分がとても素敵なのはこの作家のほかの作品と同じで、読んでいて楽しい。
少女は少女なりの冒険に挑み、「私」は「私」で迷路を手探りで彷徨い、あやうくダウンしそうになりながらも、頑張ってこの少女の危機を救うことによって、自己回復を遂げていく、というのが、乱暴なあらすじの紹介になる?・・でしょうか(笑)。
なんでそうあっさり元の鞘に戻れるの?出て行った奥さんは子供まで生むのになんで?「私」の夢の中でイデアとして受胎させた子らしいのでまるでキリストなんですけど、この子はどうなるの?「私」はせっかく単なる肖像画ではない絵を描くことで自己回復したと思うのだけど、そんな絵を捨てて「単なる肖像画」を描く商売画家に戻るってのはなぜ?(これは加藤典洋さんも新聞の書評家何かで書いていましたが)等々、色々疑問はあって、加藤さんによれば、それは第3部、つまり続編が当然あることが前提とされているから、なんだそうです。また4年だか7年だか待たされるんじゃないでしょうな。私はそれまで生きてるかどうか分からん後期高齢者なんだから、書くなら早めにお願いしますね。
別に書評家でもないので、書かなきゃならないわけでもないし、読んで楽しめたらそれで充分。今回もとても面白かったし、或る意味では分かりやすく思えました。加藤典洋さんによれば「村上春樹は難しい」(岩波新書)らしいから、深く読めばそうなのかもしれません。
深く読まずに(笑)さらっと読めば、これは最初からコキュの話だなってすぐわかってその線で読んでいけますね。寝取られ男。
イケメン男に最愛の妻を寝取られて、青天の霹靂のごとく大ショックで呆然自失。車を駆って北国まで出かけ、どの町や村へ行ったかも定かには覚えがないようなありさまで、ようやく落ち着いた先が友人の父親の屋敷で、この父親が主人公と同じ画家、それも著名な日本画家で、もともと洋画家だったのに戦中のヨーロッパへ行ってウィーンで反ナチ組織に関与して捕まって恋人を殺されたり自分も拷問を受けた後、過去を封印されて送還され、日本画に転向した曰く因縁をもった画家。いまは病院で死にかけているこの画家の家に友人の好意で逗留することになり、そこで絵を描きながら妻を失って負った傷を癒している。
そんな日々に画家が屋根裏に隠していた「騎士団長殺し」なる奇妙な絵を見つけ、また、裏山の社のそばにあった奇妙な穴の底から聞こえる鈴の音に導かれて、「ご近所」として知り合った、一人で広大な屋敷に住む免色という男の計らいで穴を掘り、鈴を取り出すと、ますます不思議なことが次々に起きます。やがてその絵の中の騎士団長の姿かたちを借りた「イデア」が姿をあらわすあたりから物語は非現実の世界を彷徨い始めます。それは作家の頭の中の一寸先も分からない手探りの彷徨の世界へ我々を巻き込んでいくようなところがあります。
まあこう要約的に書いたって、読まなきゃこんな荒唐無稽な話をしてもわけわかんないでしょうから、この辺でやめますが、へんな言葉づかいのこの騎士団長が登場して、なかなか話がぶっ飛んで面白くなってきます。「私」が絵を教えている教室の生徒でもある、免色とのイワク因縁のある少女が実に思春期の少女らしい、とても扱いにくく同時に魅力的なニンフェットとして描かれています。まだ小さな胸のことを二人の秘密のように「私」と話す少女を淡くコケティッシュでありながら蕾のような可憐さで描いていく、この作家はこういう人物を描くのはとてもうまいなと思います。
ついでに言えば、或る意味であからさまな会話が、実に気の利いた品の良い言葉のやりとりとして描かれていて、この少女に限らず情事の相手である人妻との会話にしても、会話の部分がとても素敵なのはこの作家のほかの作品と同じで、読んでいて楽しい。
少女は少女なりの冒険に挑み、「私」は「私」で迷路を手探りで彷徨い、あやうくダウンしそうになりながらも、頑張ってこの少女の危機を救うことによって、自己回復を遂げていく、というのが、乱暴なあらすじの紹介になる?・・でしょうか(笑)。
なんでそうあっさり元の鞘に戻れるの?出て行った奥さんは子供まで生むのになんで?「私」の夢の中でイデアとして受胎させた子らしいのでまるでキリストなんですけど、この子はどうなるの?「私」はせっかく単なる肖像画ではない絵を描くことで自己回復したと思うのだけど、そんな絵を捨てて「単なる肖像画」を描く商売画家に戻るってのはなぜ?(これは加藤典洋さんも新聞の書評家何かで書いていましたが)等々、色々疑問はあって、加藤さんによれば、それは第3部、つまり続編が当然あることが前提とされているから、なんだそうです。また4年だか7年だか待たされるんじゃないでしょうな。私はそれまで生きてるかどうか分からん後期高齢者なんだから、書くなら早めにお願いしますね。