2009年08月23日

サントリーミュージアムの「休館」


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 昨日の朝刊に、サントリーミュージアムが来年末に「休館」になる、と出ていた。「休館」といっても、臨時休館とは違うようで、入場者減で経営的に支えきれなくなったということのようだから、事実上、閉館される、ということだろう。

 海遊館やマーケットプレイスなどと並んで、大阪市のウォーターフロント開発・天保山地区の目玉施設と位置づけられ、市のもつ土地に、サントリーが80億円かけて作った施設で、安藤忠雄の設計による建築も面白く、面白い企画展もあったので、以前は割合見に行ったこともある。巨大スクリーンでの映像にも面白いものがあった。

 けれども、近年はほとんど足を運んだことがない。どこか美術展でも行こうか、と探すときも、ウェブなどで中身を調べて、ぜひここまで足を運んででも見たい、と思うようなものは私の場合には無かった。美術館の運営が財政的に苦しくなって、現代美術であっても、一般の人でも魅力的だと感じるようなものを企画する余裕がなくなっていたのかもしれない。

 海遊館には、つい先ごろも、まだ「カイニュウカン」としか言えない孫をつれて遊びに行き、美術館側の食堂が落ち着けそうなので、昼食をそちらでとり、売店を覗いてみることはしたものの、展示のほうは案内を見て入る気になれずにやめた。

 たしかポスターのいいコレクションを持っていたりしたと思うし、いろんなジャンルの現代美術、同時代美術を幅広く紹介していたと思うけれど、一般受けするような展覧会ではなかったかもしれない。

 朝日新聞によれば、年150万人の集客と約15億円の入場料収入を見込んだが、ピークが'95年の101万人で、「周辺に商業施設が予想以上に集積されたなかったため」入場者数が伸びず、昨年は65万人まで落ち込んで、最近は年間数億円の赤字だったという。

 もともと美術館の運営は入場料だけでは全然成り立たない。はるか昔ではあるけれど、文化庁の委託で、全国の450館余の美術施設をアンケート調査と政令指定都市の主な美術施設を実際にまわって調査して、その運営についても分析したことがあるが、記憶に誤りがなければ、平均的な美術施設の運営財源のうち入場料は2割程度しか占めていなかったと思う。公立は2割ちょうどくらい、私立はもう少し高かったが、それでも3割までは行かなかった。

 あとは公立なら当然都道府県、市町村のお金(直営でなくても、委託金の名目で出したり、基金をつくって支出したり)、民間の美術館ならそれを作った親会社がスポンサーになって支えている。

 そういう意味では、サントリーはよくこれまで支えてきたと思う。

 しかし、当初年間150万人をめざした、という新聞報道が事実だとすれば、それは少々甘すぎる見通しだったと思う。(前の職場へ委託して私に見積もらせてくれたら、そういう見通しは出さなかったのになぁ・・笑)

 上記の調査よりはずっと「近年」に近いけれど、京都でかなり網羅的に広義の歴史文化系博物館の簡単な調査をしたことがあり、これは新しく企画していた施設のために、集客数を推計するための基礎資料を得るためにした調査だったが、集客数100万を超えたのは、有効回答の中では、たしか二条城と映画村だけだったと思う。後者のほうは、回答自体が大雑把で、ずっと前から公称100万と言われていたから、率直に言って数字自体があまり信頼できなかった。当時でももっとずっと減っているはずだ、と思われた。

 しかし、いずれにせよ、観光会社と提携して市街観光ルートに位置づけられた観光施設で、大型バスでどんどん乗り付けてくるような仕掛けがない限り、ミュージアム(類似施設を含む)で年間100万を維持することは、まず難しい。

 現代美術に光をあてて、比較的とんがった企画展も開催してきたような美術館で、ピーク時にせよ100万を超える集客をはたし、集客力が落ちても50万人以上集客しているというのは、私からすれば、むしろよく健闘していたなぁ、という評価になる。

 やはり立地の問題は大きかっただろう。私のように京都に暮らしていればなおのこと、大阪の人にとっても、天保山まで行くのはちょっと「わざわざ」という感じになるだろうし、よほど惹きつけるなにかが無ければ、億劫になるだろうという気がする。

 新聞では周辺の商業集積が進まなかったから、というふうに書いてあったけれど、商業集積は逆になにか機能的な集客装置(例えば駅だとか)や文化・娯楽などの魅力的な集客装置(例えばシネコンだのファッションやデザイン関係のギャラリーだの企業の先端的なショーケースだの、新しいタイプの遊園地のような)があって、基礎的な集客力が無ければ商売が成り立たないから寄ってくるはずがない。

 文化機能と商業機能の集積は、卵が先か鶏が先かみたいな話になるけれども、パリのグランプロジェのラ・ヴィレットやバスチーユのように、もともとあまりイメージのよくない地域に、再開発で、地域の中心に巨大な柱を打ち込むように、ドデカイ文化施設を作り、そのインパクトで地域のイメージを変えてしまうようなやり方で成功しているのをみても、その種の文化先行型というのがありえることは確かだ。

 ただし、最初に打ち込む杭は大きく深く、その後の地域を支えるに十分なインパクトをもつものでなければならない。

 海遊館はかなりのインパクトをもつ施設ではあったけれど、サントリー美術館は、その海遊館と必ずしも相乗効果を持ち得る、相性のいい施設だったとは思えない。

 実際に調べてみないと本当のところは分からないけれど(もちろん大阪市なりサントリーなりで調べているとは思うが)、客層はずいぶん違うのではないか。
 子供づれで海遊館を訪れる人が、その足で行ってみたくなり、また行ってみて楽しめる、あるいは快適に過ごせるような施設では、サントリー美術館はなかったと思う。

 ここにはむしろ、別のところにできているキッズプラザのような施設があると良かった。交通博物館のようなものでも、まだマシだったろう。

 むろん、もっと多様な数多くの選択肢ができて、その中にいまの二つもある、というのであれば、それはそれで異なる客層を呼べる地域として成熟していく道もあるが、ある程度インパクトのある文化施設が海遊館と、おそらくは客層の違う現代美術中心のサントリー美術館ということになると、辛いものがあるだろう。

 全体のこの地区の集客力が伸びない限り、商業施設も、たぶんこの地区を訪れる人々(その多くは海遊館の来館者)にとっては、マーケットプレイス一つで大体は事足りてしまっただろう。

 天保山はもともとは何も無かったところに人工的に作られたゴミの山だ。そこを櫻の名所かなにかにして花見時には沢山の庶民が集まってくるような場所にしたのは江戸時代の庶民の知恵だ。

 集客装置は文化施設、娯楽施設には限らない。「海に融ける太陽」が美しいなら、それもまた優れた集客装置。何年かがかりで櫻を数万本植えて、江戸時代の風景を再現するのも、またいいかもしれない。港であることを生かした、港らしい開発のしかたというのは、世界中に様々な成功例がある。市内の施設の再配置や、府と市、民間をまじえた連携で、新しい時代の集客装置の知恵が出てくるかもしれない。

 せっかくの歴史的にも面白い場所、サントリーが撤退して、このまま萎えていくのは惜しい。  

 

 
 


at 22:45│
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