2009年04月20日

「鴨川ホルモー」(本木克英 監督)

 原作が面白かったので映画のほうも見に行きました。

 率直に言って、映画のほうは原作ほど面白くなかったです。ただ、「おに」(式神)はよくできていたし、原作に忠実な雰囲気につくってあって、あれが群れをなして京都の路地を走る光景は、なかなか良かった。

 もともとが、「陰陽師」的な、あの「おに」が活躍する古都に伝わる奇想天外な「試合」の話の面白さでもたせているけれど、芯はごくシンプルな青春の純情な片思いと挫折の話ですから、ドラマとしては薄っぺらにならざるを得ないところがあるのかな。

 「おに」が跳んだり跳ねたり走ったりするのはいいけれど、それを扱うほうの人間は生身の人間ですから、「陰陽師」のように平安時代で全部がおどろおどろしい魑魅魍魎の跋扈する世界であるような場合と違って、現代の風景の中に立って呪術的な奇怪な言語を発し奇怪な身体の動きをみせる生身の役者の演技がどうしても浮いて、あほらしくみえるところがあります。

 空を覆わんばかりの黒い怒りの「神」も、映画「陰陽師」の世界でなら一定のリアリティを持つけれど、現在の京都の風景の中で凄まれても、怖くもなければ滑稽でもなくて、なんだか中途半端なのです。

 でもまぁ役者さんは若い粋のいいのがやっていて、一所懸命ですから、がんばれがんばれ、って気持ちで観ておりました。彼らは元気よく走り回っていますが、でもなんというかストーリーのテンポが、この種の映画としてはあまり良くない印象です。もっと疾走感というかスピードが必要だし、テンポよく運ばないと、もたもたぎこちない間の部分であほらしさが染み出してきてしまいます。

 こういうのは、次々に私たちの想像力を超えて登場する奇想天外な要素にいちいち立ち止まる間もなく、おいおいおい!と言ってるうちにドンドコドンドコ調子よく連れて行かれて、休む間もなく笑ったり驚いたり呆れたりしながら画面を追って疾走して疲れてもうダメェ?ッ!とへたり込んだ瞬間にドドドーンッ!と最後の打ち上げ花火100連発か何かがいっせいにあがって幕、みたいなテンポの良さが必要だと思います。

 でもまぁ、京大や吉田寮(映画では百万辺寮でしたっけ)や吉田神社や、いま菜の花の咲いている高野川の風景(下の写真は本当の高野川の河川敷)や孫といつも渡る亀石などがそのまま出てくるので、私たちにはなじみの光景で、ひょっとしてどこかに俺も映ってやしないか(笑)と探す目にになったりして、少し贔屓目になって見終わったのでした。

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