2009年04月20日

「レッドクリフ?」(ジョン・ウー)

 金をかけた戦闘シーンが見たい人には堪能できる映画だったと言えそうですが、ドラマとしては平凡かつ大味で、ちっとも良くないです。

 赤壁の戦いだけで2時間半にも及ぶ映画を2本作るということに、少々無理があったのかな。

 或いはジョン・ウーだからこういう映画になるのは仕方がないのかも。
 ビュンビュンと沢山の矢が飛んで、兵士たちの体に突き刺ささり、バッタバッタと倒れ、火炎に包まれた戦場で、体のよく動く、悪くない俳優たちがなかなか見事なチャンバラをやってみせる、そういうのはさすがジョン・ウーで、見ごたえがあります。(しかし、軍船の浮かぶ入り江とかのシーンは、やっぱりいかにも模型っぽくて、大規模なセットと思われる城砦などのシーンに比べて見劣りがしました。赤壁の戦いでの戦略に軍船が重要な役割を果たすだけに、このへんがちゃちに見えるとちょっと悲しい。)

 レッドクリフ?の感想で書きましたが、趙雲役の役者は、今回も良かった。トニー・レオンも自邸で剣の舞を披露してくれるところはなかなか美しい。

 しかし、三国志演義の主要な面白さである知恵比べ、駆け引き、騙しあいのドラマは、ごく単純で、原作の物語における諸葛孔明の神わざのような透徹した洞察のすごみ、といったものはまるで出番がありません。

 魯粛もなんだか出来すぎの生真面目な大将で、面白みがありません。曹操は欺かれて結果的には敗軍の将になるとしても、もっともっとスケールの大きさを感じさせないとダメでしょう。女に騙されたあとは呆けたような顔をさらすだけというのは俳優に対しても歴史上の曹操に対しても失礼な演出です。

 孫権の妹の敵兵とのラブロマンスは噴飯物のメロドラマだし、魯粛の妻が一人で乗り込んで曹操に茶を振舞って風向きが変わるまで時間稼ぎをして勝利を導くというエピソードも阿呆臭い。そういうのは歴史の中の眉唾物の逸話として語り継がれる形で伝えられてこそ面白みもあるけれど、戦闘シーンでリアルな迫力を出そうとしている映像の中で、マジに見せられたら馬鹿馬鹿しくて見ていられません。(それに、私にはこの女優さん、曹操が魅せられるほどの女性にはどうしても見えないのですが・・・)

 女性がうまく描かれていないのも、まあこういう戦闘ものだから仕方ないか、とは思いますが、中途半端に役割を与えると馬鹿みたいなことになります。女性にはもっと別の役割を与えればよかった。

 新聞の広告で何十巻ものテレビドラマの三国志が出ていて、中国のこの種のテレビドラマに与えられる賞という賞を総なめにしたように書いてあるので、ちょっと気を惹かれたのですが、見たという人に訊くと、韓国のソドンヨなどに比べたら全然ダメだそうです。

 きょうのレッドクリフも、金のかけかたや、登場した俳優の著名度や、大掛かりなセット、大掛かりな戦闘シーンなどのスケールでは当然、桁違いですが、ドラマとしてはソドンヨの一コマの密度にも及びません。これなら、茶の間で寝転がって録画したソドンヨの一回分でも見ているほうが実がある、という感じでした。残念。

 

 

at 00:25│
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