2006年07月20日

ゆれる

 西川美和監督はこれが2作目だそうだ。才能というのは恐ろしいものだと思う。久しぶりにいい映画を観た。

 刑事事件をストーリーのベースにしながら、犯罪や裁判を扱った推理劇でも単なる心理劇でもなく、兄弟というぬきさしならない関係に縦深的に切り込んでいくような本質的な展開で2時間の長尺をここまで高いテンションで引っ張っていけるのは大変な力量だ。

 監督自身のオリジナル脚本らしいシナリオの質。兄弟の心理的な確執などは別にテーマとして目新しくはないが、親の世代の兄弟の確執を重ね合わせることで、時間的に重層化され、奥行きが出る。
 構成、とりわけ映像の転換の巧みさ。そして、これ以上はないと思わせるキャスト。とりわけ香川照之の表情の演技のすばらしいこと。香川がいなければ、この映画はまったく成り立たなかったろう。

 オダギリジョーも、映画にテレビにCMにこれだけ出ずっぱりで、よくまぁこれだけの演技ができるものだ。タフさには舌を巻く。田舎の「つまらない人生」を足蹴にして出て行き、都市の洗練と薄汚れを身につけた浮薄な成功者(カメラマン)である弟役だが、もと田舎者の泥臭さもちゃんと引きずっているところがいい。

 うだつのあがらないその他大勢の役者だった仮面ライダーマンの孤独な彼の初期の役者人生が生きているような気がする。香川輝之については言うまでもないだろう。もうこれは天性の役者の血だと思うより仕方が無い。

 脇役陣もよかた。カメラも照明も。唯一の不満は?欲を言えば?音楽かな。

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 M=i=? はこちらもあのイントロが聞こえてくると、もう期待でワクワク、愉しむことだけを期待して感覚を開いているので、それを満たしてくれさえしたら文句なし。殴ったり蹴ったりはあまり好きじゃないので、もうちょい007的にスマートにやってほしいとは思うけれど、息もつかさぬ展開に堪能する。
 
 ところで、最後にイーサンが殺されそうになるとき、縛られている奥さんの顔の意味ありげなアップがあって、唇がふっと笑っているように緩むじゃないですか。ありゃ、これはまたもう一枚顔をめくるんじゃないか、と思ったのだけど、ハッピーエンドになったので「???」でした。あれは次回への布石?

 次回予想→局長はやっぱり国家を戦争にひきずりこもうとする狂信的なネオコン一派で、それを死ぬ前に告げようとしたイーサンの教え子が優秀だったことが判明する。イーサンの結婚も仕組まれたもので、イーサンと同様親がいないという彼女も怪しげな風貌の弟もみな局長の手下。すぐれた諜報員であるイーサンを罠にはめ、彼が国家のためにすぐれた活躍をすることが、そのまま戦争の危機を招くように仕組まれる。・・違うかなぁ(笑)。

 それにしても、いつも内部に裏切り者がいて・・・というこのパターン。次回からもう少し新鮮なシナリオを使って下さい、パラマウントさん。

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 きょうは「研究日」。ハシゴして映画文化の「研究」に励んでおりました。ケータイメールの返事が遅くなってしまったみなみなさま、ごめんなさいm(_ _)m

at 22:36│
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