2005年03月11日

「バレエ・ダンサー」

  京都シネマでロバート・アルトマン監督の「バレエ・カンパニー」を観る。単純な内容だし、映画としての奥行きの深い作品ではなく、妙に行儀のよいオーソドックスで古典的な映画だが、登場するバレエが素敵で、映像も音楽も美しい。

主演以外のダンサーはすべてジョフリー・バレエ・オブ・シカゴの現役ダンサーだそうだ。しかし、ドキュメンタリーではなく、あくまで劇映画。けれども登場するダンサーや振り付け師はホンモノにこだわるという、劇映画としては過剰ともいえるリアリティが追求されている。

主演のネーヴ・キャンベルはこの映画の企画を製作会社に持ち込み、6歳から15歳までダンサーとして活躍した彼女は、すべてのダンスシーンを代役なしでこなしたという。

現実の彼女はダンサー間のはげしい競争からノイローゼになって15歳のときダンサーをやめ、モデルを経て女優に転身した人。そのバレエカンパニーでの経験が原案に生かされている。

顔つきも体型も必ずしもバレエダンサーらしくないけれど、15歳でバレエをやめたとはとても思えないほど、映画の中で彼女が踊る姿は美しい。

もう一つ、とても魅力的なのは、ヒロインの恋人ジョシュ役のジェームズ・フランコ。ジェームズ・ディーンの印象だな、と思って観ていたが、帰宅して調べると、すでに「ジェームズ・ディーン」という映画で主役をこなしたことのある俳優らしい。「スパイダーマン」でブレイクしたらしから、知らなかったのは、「スパイダーマン」を観ていない私くらいのものだったのかもしれない。

ジェームズ・ディーンほどのクセがなくて、シャイな感じはジェームズ・ディーンそっくり。やさしい素敵な目をしていて、身体が美しい。この俳優はもっともっと人気が出るだろうし、ジェームズ・ディーンの「エデンの東」のような、彼にぴったりの役柄をこなして大成する日がくるだろう。

 あと一人、準主役級の芸術監督ミスターAを演じているのが、「if」のマルコム・マクダウェル。歳とっているので見違えたけれど、よく観ればあの特徴のある目鼻が記憶の底から甦ってくる。彼がダンサーたちに、「そうじゃないんだ。いま表現しようとしているのは若者が反乱を起こした60年代なんだぞ!」と60年代を講釈するシーンが、それを揶揄する若いダンサーたちの茶番劇とともに登場するのは可笑しかった。

  「if」はイタリア人の友人と一緒にロンドンの映画館で封切を観た。司祭が反乱学生と体制(大学)側との仲裁にしゃしゃり出る最後のシーンで、ぼくらはいっせいに「撃て!」と叫び、そのとおり屋根の上でピストルを構えたマクダウェルが司祭の額をぶちぬくと、客席から喝采をおくって、(たぶん)周囲のイギリス人紳士淑女の顰蹙を買ったものだ。若気の至りである。

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