2025年01月22日

トランプの大統領就任演説

 きょうの日経新聞朝刊には、トランプの大統領就任演説の全文が、英語と邦訳で掲載されています。聞きたくも読みたくもない演説ですが、いちおうは目を通しておかなければ、これからニュースで聞かされるような世界の出来事にいろいろかかわりを持ってこざるを得ないだろう、と思って渋々目を通しました。

 内容的には前々から報じられていることばかりで、目新しいことは何もありませんでした。
  邦訳文にだけ小見出しがついていて、その最初の小見出しは「米政府は信頼の危機に直面している」で、これには笑ってしまいます。誰よりもとりわけ国際的な米国に対する信頼の危機を招いてきたのはトランプだし、これからますます招くことは確実だからです。

 この最初の一節は、彼のいうこれまでの過ちを改めて自分が大統領になるからには米国を再び偉大な国にするんだ、ということです。
 「これまでの過ち」として彼があげつらうのが、議事堂乱入事件を煽った自分への捜査が「vicious,violent,and unfair weaponization of the Justice Department and our government (邪悪かつ暴力的、不公平な司法省と政府による「武器化」)」だとして攻撃の的にしている司法、「For many years,a radical and corrupt establishment has extracted power and wealth from our citizens while the pillars of our society lay broken and seemingly in complete disrepair.(長年の間、過激で腐敗したエスタブリッシュメント[支配階級]が米国民から力と富を搾取し、社会の支柱は壊れたまま、荒れ果てたままとなってきた)」として攻撃の的とする、バイデンやクリントン夫妻が依拠するいわゆるエスタブリッシュメントならびにそのイデオロギーであるリベラリズム、トランプからすれば「過激な」左派の連中、そして「dangerous criminals, many from prisons and mental institutions, that have illegally entered our country from all over the world (世界中から米国に不法入国した危険な犯罪者たちに聖域と保護を与えた。その多くは刑務所や精神科病院から来た。)」と彼が言う移民たちの存在です。
 そしてそれらに対して何も手を打たず、ノースカロライナの大型ハリケーンやロスの火災にも何の方策もない、と非難し、その無策なこれまでの政府を攻撃する言葉にあふれています。

 二つめの小見出しは「私は米国を再び偉大にするため、神に救われた」で、例の耳たぶを撃ち抜かれた暗殺未遂をとりあげて神秘化し、大統領選挙の勝利を誇る内容で、みるべき中身はありませんが、最後のところで、「Today, I will sign a series of historic executive orders.(私は今日、一連の歴史的な大統領令に署名する)」と述べていて、実際この日に支持者たちも面前での大統領令への署名パフォーマンスを披露してみせ、26の大統領令に署名したとニュースで報じられていました。

 その大統領令の具体的な中身がそのあとに語られています。
 まず「南部国境に軍を派遣」という邦訳小見出しにある一節で、トランプは、「First, I will declare a national emergency at our southern border. (まず、私は米南部の国境に「国家緊急事態」を宣言する)」と語ります。

 まず第一に、と語られるこのことこそ、今回の大統領選で国民が誰を大統領に選ぶかという判断にとって、もっとも重要かつ切実な懸案が移民問題であったこと、トランプが的確にそうした国民の移民に対する激しい反発を的確に見抜いてきたことをはっきり示しています。

 同時にそれは、大統領選にまだ出馬する気でいたバイデンが、トランプを倒す武器として「民主主義を守れ」というキャッチフレーズを掲げていた政治的鈍感・無能ぶりをはっきり示すものでもあります。

 メキシコから南部国境への不法移民の侵入にバイデン政権が曖昧な態度(これをトランプは"catch and release” と揶揄した言い方をしています。捕まえては解き放つだけ、ということでしょう)をとってきたことはかねてトランプが非難するところで、この国家緊急事態の宣言をもとに何百万人もの不法移民を強制送還し、麻薬をもちこむカルテルを外国テロ組織に指定、さらに「the Alien Enemies Act of 1798(1798年の「敵性外国人法」)を発動して外国のギャングや犯罪ネットワークの存在を排除するとしています。
 「敵性外国人法」などと聞くと、我々ならばすぐに、第二次世界大戦中に日本人だというだけで在米邦人が収容所に入れられたことを連想していやな気分になるでしょう。

 第二にトランプが語るのは、これも国民が移民問題とともに最も重要視していたインフレの問題です。「Next, I will direct all members of my cabinet to marshal the vast powers at their disposal to defeat what was record inflation and rapidly bring down costs and prices.(次に私は全閣僚に対し、記録的なインフレを打破し、コストと物価を急速に引き下げるために幅広い権限を行使するよう指示する)」

 トランプによれば、インフレの危機は巨額の歳出超過とエネルギー価格の高騰によって引き起こされたから、「a national energy emergency (国家エネルギー緊急事態)」を宣言し、「We will drill, baby, drill. (ドリル・ベビー・ドリル[掘って掘って掘りまくる])」と米国の地下に眠る大量の化石燃料、地球温暖化を誘発する最大の原因として抑制されてきた化石燃料の無際限な活用を指示するとしているわけです。

 温暖化などまったく信じていない反科学主義のトランプにとっては、炭素を大量にこの地球上にあふれさせて温暖化を急速に進行させることになろうと、それが彼自身も言及したノースカロライナを襲った巨大ハリケーンやロスの未曽有の大火災のような災害を繰り返し引き起こすことになる、という科学者たちの危惧など「馬の耳に念仏」でしょう。

 そんなトランプにとっては、国土に埋もれている無尽蔵とも思える石油・石炭を掘らないなんて、宝のもちぐされじゃないか、ということになるのでしょう。
 たしかにそれを好き放題に掘り出して使えば、米国はエネルギー資源に不自由せず、世界のエネルギーコストの高騰とは無縁で、物価を抑制することも可能かもしれません。ただし、それは一時的なことで、しかも重篤な副作用を伴う措置であることはいずれ遠からずはっきりするでしょう。でも彼は自分が大統領である間だけうまくいけばいいと思っていることは言うまでもないことです。

 移民問題とインフレ、この二つの懸案を焦点に据えて戦ったか否かが大統領選の勝敗を分けたと言ってもいいくらいです。

 あとは何番目の課題だというような前置きなしに、いつもトランプが言っているご託宣が並列される形で続きます。
 
 地球温暖化などものともせず、石油やガスを掘り出し、エネルギ戦略で世界的に優位に立ち、米国を再び製造業国家として成功させるのだ、というのです。
 そのために「the Green New Deal (グリーン・ニューディール)」のような環境問題に取り組む政策や、ガソリンによる二酸化炭素排出を抑制するための電気自動車(EV)の義務化は撤回して、米国の自動車産業を復興させるのだ、と。

 このへんからは邦訳の小見出しでは「米国に言論の自由を取り戻す」となっていますが、その冒頭は例の外国への高関税の課税の話です。

 トランプは、直ちに貿易システムの見直しに着手し、「Instead of taxing our citizens to enrich other countries, we will tariff and tax foreign countries to enrich our citizens.(他国を富ませるために自国民に課税するのではなく、自国民を富ませるために外国に関税や税金を課す)」と述べています。

 これが、トランプが選挙戦中から言ってきた、中国には60%、カナダとメキシコには25%、その他の外国にも一律に10~20%の関税をかけるという「America first」の関税政策です。
 ただこれについては就任当日に決行と言っていたけれど、中国についてはとりあえず10%、カナダとメキシコについては2月はじめに、そうする「つもりだ」と、だいぶ後退した姿勢になっています。

 事前の「公約」どおりやれば世界的な貿易戦争になり、大混乱で、米国も品不足や物価高騰で、国民がなによりも嫌うインフレが再燃することは間違いないでしょうから、そこはトランプも取り巻きの連中のアドバイスも受けながら多少とも現実味のある打ち出し方をするでしょう。
 それでも世界の貿易システムの大きな攪乱要因となることは間違いないし、米国の超保守的な内向きの徹底した自国優先主義
が当分幅をきかせることになるでしょう。

 そうした関税政策を実行するために、あらたに「the External Revenue Service (外国歳入庁)[ERS] 」なるお役所をつくるそうです。

 またトランプはかねてから、民主党支持者の多い政府機関の職員を毛嫌いしていて、できれば一掃したいと思っているらしく、「Department of Government Efficiency (政府効率化省[DOGE]」を設立するそうです。
 例の技術に関しては一流、それ以外のことではまるでパアの感があるイーロン・マスクが、かねて自分なら政府職員を大幅に減らせると豪語していたせいか、彼をトップに据えてということらしいですね。

 ま、やってみなはれ。日本のように小規模な官僚組織でさえ、民主党が政権をとったときに役人を使う術を知らなかったために中央行政は事実上機能不全を起こしたので、米国のように省庁職員で10万人を超えるような官僚組織で大ナタを振るえばどうなるか、なかなか見ものではあります。

 トランプは教育省をなくすとか言っていましたね。トランプにせよかつてのサッチャーにせよわが安部元首相にせよ、保守派の政治家は軒並み、教育や文化に関わる役人はみな左翼だと思って毛嫌いする傾向にあるようです。
 できればそんな連中を一掃してしまって、自分が思うような教育をしてくれるような人物に取り替えたいんでしょうね。わが安部さんなら、教育勅語を奉じる学校を設立するのに安部夫人を頼ったどこやらの御仁みたいな?

 トランプの政策は環境政策・地球温暖化対策からの撤退にみるように、おおむね歴史の歯車を何十年か、ひょっとしたら100年くらい逆戻りさせるようなものばかりですが、中でも誰の目にも明らかなその種の政策があって、それは「This week, I will also end the government policy of trying to socially engineer race and gender into every aspect of public and private life. (今週、私は人種や性別を公私のあらゆる側面に社会的に組み込もうとする政策に終止符を打つ)」という言葉で語られています。

 トランプ政権のもとではLGBT(多様な性的少数者)の権利は保証されないでしょうし、企業などのDEI(多様性、公平性、包括性)といった価値基準をベースにした職場環境の改善の努力もおそらくは放棄されるでしょう。
 もともと利益を出すことだけを至上目的とする企業は、こうした市場外的な社会からの圧力に渋々従ってきただけで、それらをきれいさっぱり拭い去る大義名分(政権の後押し)ができれば綺麗ごとなどかなぐり捨てるのに躊躇しないでしょう。その兆候はすでにあらわれているようです。その代表格は早速トランプにすり寄って盛んに胡麻を擂り、媚びを売っているソフトバンクの孫正義や、ザッカーバーグ、イーロン・マスクらIT、AI関連の大手先端企業の経営者たちの見るも無残な這いつくばりようです。

 「As of today, it will henceforth be the official policy of the United States government that there are only two genders: male and female.(本日から米政府の公式方針として、性別は男性と女性の2つのみとする)」 
 つまりドゥルーズのいう<n個の性>は米国政府から、その存在自体を認められなくなったわけです。

 性的少数者に限らず、あらゆる意味でのマイノリティーは「merit-based(実力主義)」の名目のもとに顧みられなくなるでしょう。あとには権力と富に対する欲望むき出しの弱肉強食の「生存のための闘争」だけがある殺伐とした風景が残されるだけです。

 そのあと新型コロナウィルスのワクチン接種義務に反対して「不当に」軍から追放された軍人を、給与を全額戻して復職させる、という、ワクチン接種に反対していた反科学主義者トランプらしい言明があり、再び世界最強の軍隊を築くという言明があり、次の邦訳の小見出し「メキシコ湾を『アメリカ湾』に」の一節へと続きます。

 「メキシコ湾」の名称を「アメリカ湾」に改める、2015年に(先住民族の呼称を採用したらしい)「デナリ山」と変更していた山の名を、元の「マッキンリー山」に戻す、パナマに管理権を返還したパナマ運河を取り戻す、といった就任前から彼が喚いていたことがここでも言明されています。ただ、デンマーク領グリーンランドをわがものとするとか、カナダを米国の51番目の州にするんだとかいう、就任前に物議をかもした他国の主権を公然と侵害する話題には、ここではさすがに触れなかったようです。

 そのあとに来るのが邦訳の小見出しで「火星に宇宙飛行士を送る」という最後の一節です。宇宙開発で再び世界の先頭を走る野心を、西部開拓時代のパイオニア精神に重ね、世界一の大国への成長や第二次世界大戦での勝利に重ねて自らと支持者らを鼓舞することで終わっています。

 彼が議会をも司法(最高裁)をも押さえ、行政府の職員を大幅に削減したり入れ替えたりして大ナタを振るって思い通りの「改革」をして独裁的な権力をわがものとして、これらの政策の実現に突き進めば、米国は国内にさらに大きな混乱と分裂を引き起こし、世界の大きな攪乱要因になることは間違いないでしょう。もちろん彼の言うような「偉大なアメリカ」は、その行く手には決して現われないでしょうが・・・。

 歴史を百年も巻き戻すような文字通りの反動的な施策に全精力を注ぐ独裁者が導く世界に希望があるはずもなく、多かれ少なかれこれは超格差社会アメリカで鬱屈した国民の暗い情念が招き寄せた、ぶつけどころのない不幸な怨念の形象化にすぎないので、2年ないしせいぜい4年間のトランプによるちゃぶ台返しにすぎません。
 まっとうな米国人も影響を受ける世界の人々も、その期間だけじっと我慢して耐え、それまでの自分たちの歩んできた道のどこに難点があったのか顧みる時間とするほかはないでしょう。

 トランプが去って、仮に民主党の誰かが大統領になったところで、米国の圧倒的多数の大衆の底に潜む暗い情念が消えてなくなるわけではなく、その源であるひとにぎりの超富裕層が権力と結託してあの超格差社会を固定化している状況がどこかで突き崩されない限り、何度でも第二、第三のトランプが現われ、同じ悲喜劇が繰り返されるに違いありません。大衆が拍手喝采して熱狂的に迎えるそのあやしげなヒーローの顔はだんだんヒトラーそっくりになってくることでしょう。


きょうの夕餉

★カマスのから揚げ
 カマスのから揚げ(いつもの自家製ディル入りヨーグルトマヨネーズソースをかけて食べると格段に美味しくいただけました)

★イカダイコン
 イカと大根の煮物(のこり)

★小松菜のおひたし
 小松菜のおひたし(ポン酢でいただきました)

★蒸し鶏の中華風サラダ
 蒸し鶏の中華風サラダ(野菜に鶏肉が隠れています)  パクチー入り(パクチーの香り、味がすごい)

★セロリの葉のじゅやこキンピラ
 セロリの葉のジャコキンピラ(ご飯にかけていただきました)

★豆腐のカブラあんかけ
 豆腐のカブラあんかけ  椎茸、ゆり根、ギンナン入り  体があたたまりました

★スグキ、五目豆
 戸田農園の古漬けスグキ、自家製五目豆、キムチ

(以上でした)

 きょうも上賀茂までリハビリ電動アシスト自転車で行きました。戸田さんところでは今日もトマトをたくさん出していて、昨日のバカでかい、バカ高い(笑)のと違って、ノーマルな大きさの赤い普通のトマトが3個450だったかな、まずまずの値段だったので買ってきました。昨日の場かでかいのは、やっぱりいつもの戸田農家産のトマトと違って、やや水っぽい味でした。ただ、戸田さんのトマトらしい点は、甘味があったことでした。でもあれが(いくら大きいとはいえ)600円もするのは、味のわるさからいっても納得できない値段でした。きょうのは食べてないので分からないけれど、以前の戸田さんのトマトの味がちゃんとしてくれたら、サイズ、個数からみて、まあまあ妥当な価格でしょう。

 もう一つは別の販売所で出ていた壬生菜1束100円を買ってきました。壬生菜は野菜としては水菜と同じものらしいけれど、葉にギザギザがない、京都固有のものらしく、味というか野菜としての性質は壬生菜のほうがきついよ、とパートナー。どう「きつい」のか私にはわからないけれど・・・京都の産だからやさしい味かと思えば逆なのだとか。きょうとではありふれた野菜として出回っているらしいけれど、その手のことにまるで知識のない私は、自動販売機ではじめて壬生菜を買ってきたらしいです。いままでは何も知らずに買っていたのは、水菜のほうだったようです。

きょうの比叡
 きょうも昨日と同じように私が外に出たときは、青空の広がるよい天気で、あたたかくて走りやすかった。同じ場所でとった比叡山の姿も昨日とまったくかわらない感じです。

 このところ頭痛が頻発していることは前に書きましたが、きょうもなぜか左肩や左の背中がひどく凝った感じで、痛いほど。ヘパーデン症候群のために電動肩たたき機が自分で使えないので、パートナーにやってもらいましたが、あまり改善しません。来週脳神経外科で見てもらって、なにか悪い病気ででもなければ、一度左肩の手術をしてもらった病院の肩専門の整形外科の医師に診てもらおうと思っています。

 ただ、その手術と関係があるかどうか、また肩こりと頭痛との関係なども、あまりはっきりとはしません。右の方は多少の凝りはあっても、もっぱら痛いくらい凝ってしまうのは左肩から背にかけての部位なので、どうしても肩を骨折して手術して3本のボルトが今も入っている左肩だからじゃないか、と関連づけて考えてしまいます。手術自体はおどろくほど見事なもので、うまく行ったのですが・・・あれは2018年の10月だからすでに6年少々が経過していますから、最初の1年後くらいまではみてもらっているのですが、そろそろ一度X線像でもみてもらうのがよいかもしれません。






saysei at 19:21│Comments(0)

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