2011年02月20日

京都会館の改修~再整備は「文化の殿堂」をめざすべきか?~その5

(その4からのつづきです)

 

  では類似の施設で、愛知県芸術文化センターの場合はどうでしょうか。

  ここの21年度決算では、「事業活動収支」の総額が3億2300万円となっています。事業費支出は1億7千万円強、うち「委託費支出」が1億500万円ほどです。この「委託費支出」が備考のところにあるように「舞台製作委託・広報費」という内容です。

  ほかに、「出演者等謝金」の643万円とか、「出演者等旅費」の306万円とか、色々事業実施に必要な費用を合わせて1億7千万になっているわけです。

  その事業費の中には、「事業補助臨時雇用職員」の200万円弱の経費も含まれています。私たちが開館から2年目くらいにヒアリングしたときよりずいぶん低い額になっていますが、これは公演そのものが減っていること、また一公演あたりの委託要員を減らしたのではないかと推測します。

  実際、平成21年度の愛知県芸術劇場の大ホールでの公演は、2公演、のべ4回のみです。一つは7月2526日の「平成21年度文化庁舞台芸術振興の先導モデル推進事業」で、日本オペラ連名・兵庫県立芸術文化センター・東京二期会・愛知県文化振興事業団共同制作佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2009「カルメン」と、9月56日の名古屋二期会との共催オペラ「真夏の夜の夢」のみです。入場者はのべ6,715人です。

   つまり21年度に関して言えば、この二つの公演のために、あの巨大な4面舞台にフライズ、オケピット等々を持つ舞台空間、舞台全面スライド・昇降迫りを含む重装備の舞台機構、照明や音響設備等々とそれを維持管理するスタッフ、メンテナンス費用等々の一切が必要であったということになります。

  はたして「必要」であったかどうかは、愛知県については愛知県民が判断されればいいので、ここで京都市民がとやかく言うことはないでしょう。

  ただ、もしもまだ建設前に、年に2公演4回のオペラ公演のために、あれだけの施設、設備とメンテナンス費用や人員が必要なんだ、という情報を公開したら、愛知県民は決してこの大ホールの建設を認めなかっただろう、と思います。

   そして、建設したのちに、これだけ重装備の大規模施設を維持管理した上、継続的に当初の目標どおりの事業を展開する予算を組むゆとりがなくなり、徐々に事業を減らして、すでに作ってしまっていまさら潰せない施設を維持・管理するだけの、最小限のコストで抑えるために、「なにもしない劇場」に限りなく近づいていったのだろうと推測します。

  京都が同じ轍を踏んでいいのでしょうか?

   さて、もう一つこの「事業活動収支」計算書では見えない、隠れた費用があります。それは県職員の出向などによる人件費です。「管理費支出」の項目に、「人事管理費」があり、「役員等報酬支出」1億4500万円、「給料支出」5500万円、諸手当4000万円などが挙がっていますが、これはこのホールの専属職員だけのものではないかと思います。

   県立の施設で、県の100%出資による財団などが運営する施設の場合、沢山の県職員が出向してその給与等人件費はすべて県が税金で支払っていて、その分は県職員の人件費として横断的な会計の仕組みになっているから、こういうホールの運営団体による「事業活動収支計算書」にはふつう登場しません。

  しかし、それらの人は明らかにホールの事業や維持管理のために専従で働いているので、本来はそのホールの収支に計上されるべき経費です。

  それらをも併せて、そのホールや劇場を維持運営していくために、総額いくらの経費がかかり、いくらを事業収入でカバーでき、のこり幾ら税金から持ち出さなくてはならないのか、行政はそれを市民の前に明らかにする責任と義務があります。

   ところが、そういうことをきちんとやっているような行政組織を私は見たことがありません。ふつうの市民がみても、いったいそのホールの維持管理だけでいくらかかっているのか、事業をやることでいくらかかるのか、そういうことが一目瞭然になるような資料は、どこにも用意されていないのです。 

  こういうことは、行政の会計のからくりや、資料のつくり方の裏まで精通した専門家がよほどきちんと調べないと分からない仕組みになっています。

  情報公開といっても、いまの国や全国の自治体の行政の情報公開の実情とは、その程度のものです。市民が真の問題に気付かないように情報を実質的に隠蔽しておいて、恣意的な判断・決定を下し、結果的に市民に望んでもいない重い負担をかける、それが行政のやり口です。

  それで喜ぶのは、自分の任期の間に華やかな計画を打ち上げたり、開館のテープカットをしたり、パンフレットに顔写真を載せて喜色満面の市長さんや知事さんと、不必要に豪華な「文化の殿堂」など作って大きな利益を上げる建設業者や、これまたまったく不必要な重装備の舞台機構や設備類を、劇場に必要だと提案して、実演芸術にも劇場建築にも無知な行政担当者をその気にさせ、高価で無用の劇場設備を受注する設備業者くらいのものでしょう。

   建設業者や設備業者が儲けることを悪いとは言いません。それで少しでも景気がよくなるなら、と思わぬでもない(笑)。でも京都会館のような、その種の施設空間や重装備の無用なホールに関してそういうことをするのは、ほとんど詐欺みたいなものだと思います。

   おまけに、最初に建設するときに何十億円支出すれば済む、というものではない。そういう施設、設備を持つことによって、毎年何億円、下手をすれば何十億円もの税金を無駄に垂れ流す(と私には見える)ことになるのは、いまみてきた全国の主要劇場の実態が示すとおりです。

 

(その6へ続く)



saysei at 02:18│Comments(0)TrackBack(0)

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