2019年04月19日

研究者の悲劇 - 文科省の責任

 先日、長男にごちそうしてもらった会食の折に、彼が話していたとびきり優秀な若手研究者の死の事情を書いた記事が、昨日の朝日新聞朝刊に出ていました。

 仏教学の女性研究者で、指導教官によれば「ほとんど独壇場と言ってよい成果を次々と挙げていた」そうで、日本学術振興会の特別研究員(SPD)にも選ばれ、日本学士院学術奨励賞を受賞する優秀な才能だったようです。

 長男はたしか日本学術振興会の特別研究員制度のPDってやつをもらっていたはずですが、これは結構もらえる研究者の数もそこそこあるようです。ネットでたまたまみた平成26年度の例では約350名と書いてあります。もちろん全国であらゆる研究分野あわせてのことだから、わずかだと言えばわずかですが、それでも同じ年度のSPDとなるとたった16名です。長男によれば、人文系とか何とか分野ごとで言えば日本全国何万人もいる研究者でそれをもらえるのは5人くらいじゃないか、とのこと。超エリートですね。

 だけど研究員でいられる期間は3年間だけ。ネットでみたところでは平成25年度の支給予定額は、PDが月額362.000円(但し博士の学位を取得している者)で、SPDは月額446,000円、これは研究奨励金だから或る意味で自由に使えるお金、これとは別に、審査を経て認定される研究費のほうは、SPが毎年度150万円、SPDは300万円以内です。

 だからこれをもらっていられる3年間は、研究活動も、それを支える土台である、研究者が一人の人間として生きるための生活のほうも、まず保証されるわけですが、3年たったらゼロになってしまうのですから、それは大変なことですね。

 普通は「若手研究者」と言ったって、大学を出て修士、博士課程と最小限5年間前後は研究し続け、さらに全国的にも最優秀の研究者の一人と認められるほどの実績を積むとすれば、分野にもよるでしょうが、さらに最低数年は要する、とすれば軽く30歳は超えているでしょう。
 
 一般的にはもう親のすねをかじって生きられる歳でもなく、逆に今度は老親の方を自分が心配しなくてはならなくなってくる。そんな状態で、必死で研究の日々を過ごしながら、「次」の食い扶持を探さなければ、3年後には経済基盤が崩壊してしまいます。

 実際PDをもらっていたらしい長男にしても、幸いずっと奨学金を継続受給できたけれど、新しいのに応募しようとするたびに、その前の3年間のもう2年目あたりからは「次」を考えて行動せざるをえなかったようです。つまり落ち着いて目の前の研究に没頭だけしているわけにいかなくなってしまう。どうもこれが実情のようです。

 でも今回新聞で見た研究者の場合、長男が会食の時話した中身を私が聞き過っているのでなければ、SPDかそれに相当する奨励制度を2度も受けていたそうで、「もし彼女がぼくのやっているような分野の人なら、SPDを2度も受けるような人なら、全国で5指に入るトップランナーだから、どんな大学からも引っ張りだこになるはずのところだ」というようなことでした。

 専攻が仏教学だったようなので、やっぱりそういう地味な分野ではポストが極端に少ないのかもしれないなぁ、と話していたのですが、いずれにせよそんな優秀な頭脳、実績も申し分のない研究者をどの大学も受け入れることができなかったというのは本当に悔しいことで、どこか間違っていると思わずにはいられません。

 彼女は20件前後の大学で職を得るための応募を全部断られ、経済的に研究生活を継続することができず、個人的に、結婚によって活路を見出そうとして、ネットで知り合い、男性が抱えていた健康面の問題も知らぬまま「一回り以上も年上」の相手の男性と結婚し、半年後に破綻し、心を病み、離婚届を出した日の夜、自死したと朝日の記事にはあります。全然縁もゆかりもない人のことですが、悔しくて記事を読むだけで涙が出てきます。

 長男は就職活動をしたとき、40件前後の大学に応募したそうです。そして本当に幸運にもその40件目で採用していただくことができて、なんとか経済的に自立して個人的な研究基盤を確立することができました。
 自分を責め、絶望の果てに自死された今回の記事の女性研究者にも、20回で絶望せずに、倍の40回、いや50回までもあきらめずに、歯を食いしばって応募しつづけていてくれたら、或いは50件目の大学が受け容れたかもしれない、と思うと、また悔しさが募ります。

 この悲しいできごとに関して、科学技術政策に詳しい社団法人の方が、「経済的な苦境に陥った際、研究者も生活保護など自分の身を守る方法を知っておくことが大切だ」とコメントしていましたが、いささか違和感を覚えました。
 確かに個々の研究者が今置かれた自らの切羽詰まった苦境から一時的にせよ脱するためにそうした緊急避難的措置についてあらかじめ知っておくことは大切かもしれませんし、そうした機会があることを大学が研究者に周知せしめるような仕掛けも確かに必要でしょう。

 しかし、ことの本質はそういう問題ではないだろう、という気がします。基本的に、いまの国の科学技術政策が、そして研究と研究者を支援する体制が間違っているのだと思います。

 先般も京大の山極総長が、全国の大学協会か何かの代表として、文科省のいまの大学支援や研究および研究者支援のありかた、予算の出し方が根本的に間違っており、このままでは研究活動、研究者のよって立つ基盤が崩壊し、日本の学術研究の未来がなくなってしまう、ということを強く主張して、文科省の誤った政策理念を直ちに改めるよう求めたということが報道されています。
 彼だけではなく、ノーベル賞を受賞されたような碩学が、みな同様の危惧を懐き、警告を発しています。

 しかし、文科省はかつての大学等支援の厚みを否定して、重点的に予算を注入して大学のありようを改めさせ、学術研究の生産性を上げるんだ、というような浅はかな方針転換にこだわり、いったんやり始めると面子にこだわる役所根性だけが意固地に貫かれて、そうした当の研究者たちのわが国の学術研究の現状と将来への切羽詰まった危機感に促された警告に、まったく耳を貸そうとしていません。

 そのため、せっかくの山極総長による全国の大学の意見を集約した主張に対して、研究活動や研究者の現状にも、大学の現状にも無知無理解で、長期的な日本の学術研究の発展になどまったく視野の及ばない、浅はかな文科省の担当課長か何かは、「文科系の学問など世の中の役に立たんから無用ではないか」という趣旨の発言をしたらしいどこかの阿呆と同様、まったく学術だの研究だのといったものについて見識を持たないくせに、利益追求の産業界と同様、生産性向上だけを至上とするようなとんでもない理念と論理的にはまったく同じ誤謬に満ちた理念に凝り固まって、「学問の世界だけが例外というわけには行かないんだよ」とデスクを叩いて怒鳴るという、ヤクザまがいの態度で応じた、というような新聞記事を読んだおぼえがあります。

 こういう馬鹿が、自分の手に国民の税金が委ねられたのを良いことに、ひたすら日本の学術研究の基盤を崩壊させ、研究者らを追い詰めて、今回のように最優秀の研究者をも死にいたらしめるようなことをして、自らはお役所の課長席か何かでそっくり返っているのだと思うと、本当に悔しくてなりません。
 こういう阿呆な役人をのさばらせておく政治はいったい何をしているのか。選挙で選ばれた政治家がこういうとんでもない役人を叱りつけて方向転換させなくて、誰が正しい軌道に戻せるのか。

 一人の研究者が強いられた悲劇を、個人的な問題に帰して忘れ去ってはならないと思うのです。電通の優秀な新人女性社員が長時間の過重労働やハラスメントによって、いわゆる過労死とされる自死に追い込まれたことが、単に彼女の個人の問題ではなく、また電通という一企業の問題でもなく、この日本社会の産業界全体に根強く残る、ときに正反対の美徳とさえされる悪しき慣行やこれを許容する理念を根底から転倒することなしには問題が解決しないことが、繰り返される過労死によってはじめて誰にとっても明らかに目に見えるようになり、産業界も政府も、少なくともタテマエとして「働き方改革」なるものを掲げざるをえなくなったことは明らかです。

 これと同様、今回の研究者が強いられた悲劇もまた、そのことに本来的な責任がある文科省の愚劣な政策理念を転倒し、文科省を後押しする政治家たちの無知、無関心、無見識を根底からあらためさせるために、選挙民もメディアも研究者ら自身も各所で声を大にして抗い、権力づくの文科省のやり方を国民の力であらためさせていかなければ、亡くなった優秀極まりない研究者の霊が浮かばれないと思うのです。

saysei at 23:09|PermalinkComments(0)

いただきます!

2019-4-19夕食全景

 今日の夕食も好物ばかりで、どれからいただこうか、と迷い箸ならぬ迷いナイフ&フォークでした。

zuppe

 赤ワインを飲んで、まず温かいズッペ(スープ)から。野菜たっぷりで、キャベツやニンジンの甘みがよく出て、これにトマトの酸味が加わって、非常にいいバランス。鶏肉団子がはいていて、そこに練り込んだクミンの香りが素敵。

スパゲティ
 タケノコとグリーンピース、ホタルイカのパスタ。先日長男が連れて行ってくれた「さくら伊食堂」のとっても美味しいパスタを食べたのに触発されて、イタリアンのパスタにグリーンピースがよく合う
ことを再確認して、これを作った由。白ワインとスープで味付けし、あっさりしたタケノコと豆の素材の味に、ホタルイカの海の味が非常に濃厚な存在感を示して、抜群の美味しさ。

羊
 これは申すまでもなく私の大好物、牛肉より好きな骨付きラム。
 いつもはソースに一工夫するところを、今夜は木の芽を手に入れて、塩コショウというあっさり味で焼いて、それに長男が前に買ってくれていたバミサリコをつけるのですが、きょうはパートナーが思いついて、お友達が普段舐めているらしいブルーンを事故で入院しているとき沢山余ったからと下さったのを入れたそうです。そうしたら、適度な酸味とプルーンの味がついて、ちょっと面白い、羊肉によく合うソースになりました。

 本当は、もっと山盛りの木の芽で埋めたかったみたいですが、庭の木の芽、うちのは土壌のせいか育たず、共同庭の誰も利用しないやつが背丈より高くのびてほとんど手が届かない高みに僅かな葉をつけるだけなのを遠慮しいしい拝借しただけなので(笑)、わずかに散らす程度になりました。でも香ばしくて素敵。

 羊肉はカナートにごく少量出るらしいのですが、買う人が決まっているのか、よく売り切れてしまうので、新鮮ないい肉が出たとき手に入れて冷凍しておくようです。100g590円とかで、牛肉に比べれば安く、私にとっては、ビーフステーキよりよほど美味しい。牛なら懐の関係でこの半分しか食べられないでしょうし(笑)。

salad
 サラダは生のタマネギ、キュウリ、レタス、プチトマトなど。フレンチドレッシングでいただきます。

saysei at 21:22|PermalinkComments(0)

月に夜桜

月1
 今夜は月が真ん丸で綺麗。共同庭は花盛り。月に夜桜、とパチパチ撮ってみました。
月に桜

 2枚目。

月と桜7
 八重桜と3枚目。

月に桜3
 4枚目。
月に桜4

 5枚目、枝垂れと闇に浮遊する桜花に月。

月に桜5
 6枚目。鈴なりの白い花と。

月に桜7

 花に埋もれて7枚目。

月に桜9
 フラッシュをたかずに、静かに眺める月と夜桜、8枚目。

月に桜10

 少し狭めて9枚目。

月に桜8
 月に夜桜10枚目。
 





saysei at 20:44|PermalinkComments(0)
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